ローリングストーン・レコードガイド

今回は、アメリカの老舗音楽雑誌「The Rolling Stone」誌のスタッフの編集になる「ローリングストーン・レコードガイド」をご紹介したいと思います。


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約580ページのボリューム。


アメリカでは1979年に刊行されたようで、日本語版はその3年後、講談社から1982年（昭和57年）3月に出版されました。
昭和57年というと私が就職してほぼ一年経った頃ですが、この本はさらに数年後、古本屋で買い求めたものです。

この本は、発行当時アメリカで入手可能な約10,000枚のアルバムについて「ロック、ソウル、カントリー、ポップ」「ブルース」「ジャズ」「ゴスペル」等にジャンルを分け、批評及び6段階による評価をしたものです。
言ってみれば、ポピュラー音楽版ミシュランガイドです。
（色も赤いし・・・）


評価は最も価値が高いのが五つ星で、最下位は「無価値」（「作られるべきではなかった。最悪」だそうです・・・）としています。
買ったとき、前所有者によるものと思われる独自評価のエンピツ書き込みがありましたが、もちろん消しゴムで消しました。

基本的にその当時入手できるレコードを対象に記載されているので、そのときカタログから消えていたタイトル（例えばビーチ・ボーイズだったらTodayやSummer Daysのようなオリジナル盤）は、批評欄で一部触れられているものの、評価の対象にはなっていません。
この編集方針は序文で明確に示されており、また改訂版を出すという前提でもあったようです。
実際に改訂版もその後出たようですが、邦訳はなかったと思います。

私がこの本を購入当時に一番好きだったアーティストはポール・サイモンだったのですが、彼の作品に関する記述を読むと（評価者はデイヴ・マーシュ）、手放しの高評価となっています。
なにしろCBS時代のオリジナル・スタジオ・アルバム3枚がいずれも五つ星なのですから！
これと同じくらい軒並み高評価となっているのが、スティービー・ワンダーです。


ビートルズについて見てみると、「サージェント・ペパーズ」については少々厳しい評価が与えられているものの、おしなべて高評価です。
面白いのは（というか当然なのでしょうが）あくまで米キャピトル盤を対象とした評価であって、リボルバー以前のアルバムはイギリス編集とは異なる内容でありながら、高評価となっています。


アルファベット順なので「Beach Boys」の次が「Beatles」となっています。
「Pet Sounds」は三ツ星（平均点）という評価で、これ自体はそれほど悪くはないのですが、論評の中でブライアンがサージェント・ペパーズと同様の試みをしたことによる失敗作呼ばわりしているのはちょっと納得いきません。
この頃は、イギリスのアーティストはアメリカで、アメリカのアーティストはイギリスで評価されていたような気がするのですが、どんなもんなんでしょう？

個人的にありがたかったのは、ジャズの章でした。
この本の立場としてはロックに影響を与えたジャンル（あるいは影響されたジャンル）も包括して取り扱っているということで、決してそのジャンルを「網羅」しているわけではない、としています。
とはいえ、初心者の入口としてはなかなか良いのではないかと思います。


かなり辛辣な批評も多く、そのまま鵜呑みにできない部分も多い本ですが、労作にはまちがいなく、面白い読み物です。

タグ：音楽関連本

コメント 2

あー、この本は私も買ったような気が。探せばあるかも知れません。
この時代と今とじゃアルバムもアーティスト自体も大きく評価が変わっているでしょうね。

この本が出た頃まではほぼ無視されていたのに、80年代以降になって再評価されたというアルバムもたくさんあるし、今読むとおかしな部分がたぶん多々あると思います＾＾。

数年前に同じくローリング・ストーン誌が発表したロックのアルバム・ベスト100にランクされた内容と照らし合わせても恐らく大きく違うんじゃないでしょうかね。
当時は評価がまだ低めだった「PET SOUNDS」はあれでは確か2位か3位だったような気がしますし。

時代の流れと共に評価は変わるもんですね＾＾。
by MASA (2010-02-12 00:41) 

訳者のあとがきを読むと、評価内容に納得出来ない部分も少なくないと書かれてますので、その時点でさえおかしな部分というのはあったのかも知れません。
この本のよい点は、評価内容はともかくその時点で入手できるアルバム／アーティストをなるべく多く取り上げているところだと思います。
by はじめたろう (2010-02-12 06:07)